【ダガヤサンドウの10坪店舗 (路面店) 】北参道と千駄ヶ谷を中心としたエリア「ダガヤサンドウ」で、8坪の焼鳥と蕎麦の立ち呑み屋「鳥逢酢」をスタートした林田さんにインタビュー〈後編〉
10坪の可能性を信じ、挑戦している方のお話を聞く「10坪ストーリー」。
前回に引き続き、「鳥逢酢」の林田さんにお話しをお聞きしました。「お客さんの心はファースト・コンタクトで掴む!」という極意&経営哲学をうかがいました。
◆10坪不動産での投資と回収の目安
いまうちのお店の客単価は、平均2500~3000円です。そばを食べていただくと3000円を超えるという設定でしょうか。開店前は、客単価2500~2800円いけば御の字と考えていましたが、締めのそばが好評で想定以上の数字になっています。
インタビュー前編で、投資回収が3~5年が一般的なところ、1年を目指せるとお伝えしました。こうした試算は当然ながら重要ですよね。
わたしの経験だと、開業資金として、坪100万円を超えると回収に時間もかかるため、経営に我慢が必要になってきます。脱サラなどで個人で融資をお願いする場合も、1000万円を超えるとそもそも資金調達も難しい。当然、坪70万円と100万円なら、融資も70万円規模の方が下りやすいものです。
10坪規模なら、自己資金300~400万円を手に持って、半分は融資で開業という形で、十分、勝算があると思います。
◆飲食店の将来性と10坪店舗の秘訣
人工知能が人間の能力を超えて、多くのサービスがこれからAIに置き換えられていくと言われています。でも私は、食でしか人のお腹は満たされないし、食でしか与えられない感動があると思っているんです。
どんな未来になろうと、世の中から絶対に飲食店はなくならないし、普遍的で魅力的なサービスだと思います。
また、10坪ほどのお店であればカウンター勝負。店主やスタッフの人間力で勝負できるんです。他のサービスではいま以上に優れたテクノロジーに淘汰されていくかもしれませんが、飲食店の魅力って人の魅力ですから。
たとえ料理人の経験がなくても繁盛店はありますし、極論すれば、10坪なら味じゃなく、人間力で売ることができます。
料理を出すときにも一言添える、「今朝届いたやつなんで歯ごたえいいでしょう」とか、「明日になるともう少し柔らかくなってしまうんですよ」とか、ちょっとした会話があると、おいしさも倍増するんです。こんなコミュニケーションこそ、飲食店の醍醐味だと思います。
◆今後の展望と、これから開業を目指す人にアドバイスを
個人的には、日本国内だけでなく、ニューヨークやパリで、10坪の焼鳥と蕎麦のお店を持ちたいですね。この店で培ったビジネススキームを輸出したいです。
これから飲食店を開業したいという方も、10坪規模ならチャンスは絶対にあります。スタートにはもってこいです。大箱を経験した私も、もうそんな大きな規模のお店は時代に適っていないと思っているので。
人と人とのコミュニケーションこそ重要。なにより、食は普遍的なものだから長く続けられると思います。その第一歩として「お客さまとのファースト・コンタクト」を大事にしてくださいとお伝えしたいですね。
美味いものを出していればお客さんは集まるなんて考えは当たり前ですし、安易な発想です。「めちゃくちゃ元気がいい店だな」とか、「愛想がいい対応だな」とか「電話対応がいい」……、なんでもいいから“出だし”の部分で、「この店いいな!」と思ってもらえる“つかみの工夫”が大切になると思います。
◆おっと、聞きそびれていました。最後に林田さんのこだわりのファースト・コンタクトを教えてください。
わたしの場合、「嗅覚にも訴えるサービス」を意識しています。
ダガヤサンドウの地域は、感度の高いお客さんも多いので、立ち呑みではあるけども清潔感にこだわっています。女性の方のお客さまも多く、最初に手にしたおしぼりがいい匂いだと、他店との差別化にもなりますよね。妻にも相談して、女性に印象のいい柔軟剤を選んでいます笑。
それを雑誌の記者さんも気づいてくれました。
‐林田さん、取材のご協力、ありがとうございました!
おいしい料理もさることながら、元気よくお客さんを迎え入れる、いい匂いのおしぼりを出す、名前を覚えて常連さん同様の対応を心がける、料理は必ずひと言添えて出すなどの気配り…、10坪飲食店経営のヒント満載でした!
ちなみに、店名の鳥逢酢は、何かしようとするときの「とりあえず…」の語呂に漢字を当てはめたのだそう。「とりあえず、ビールですか?」。そして、「締めはそばで」てな具合でしょうか?
【※取材店舗情報※】
店名:焼鳥と蕎麦 鳥逢酢(とりあえず)千駄ヶ谷店
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷3-32-7
ジャンル:焼き鳥、そば(蕎麦)
営業時間:月~金 11:30~14:00
月~金・土 17:00~23:00
席数:不明
定休日:日曜日・祝日
所在地:東京都渋谷区千駄ヶ谷3-32-7
予約・問い合わせ 03-6384-5878
お店のHP: https://www.instagram.com/toriaezu_sendagaya/
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