【四谷荒木町の10坪店舗 (空中階) 】 台湾料理マニアック! こだわりの小皿で勝負!南三の水岡さんにインタビュー!
10坪の可能性を信じ、挑戦している方のお話を聞く「10坪ストーリー」。
今回は、四谷荒木町にはじめての店舗「南方中華料理 南三」を開業した、水岡さんにお話を伺いました。
-初の開業までの経緯を教えてください!
20歳から中華料理の業界に入って、渋谷「天厨菜館」、赤坂「メゾン・ド・ユーロン」、銀座「黒猫夜」、三田「御田町 桃の木」など、中華料理の人気かつ有名店で修業してきました。そんななかで途中一度、もっと料理の勉強がしたいなと、台湾に留学したのが独立開業へのきっかけだったかもしれないですね。
台湾にはナイトマーケットがあって。言葉そのままにいうと、夜市なんですけど、いろんな屋台が並んで、にぎやかなんです。しかもどこも料理がおいしい。
僕は台湾で料理を勉強したくて、半年ほど語学学校にいってから、台湾の料理学校に通いました。
学校で話を聞いたら、屋台から商売を始めて店舗を構え、成功している“屋台長者”が多くいるっていうんです。屋台から始まるサクセスストーリーを間近に聞いて驚きました。
もうひとつ驚いたのは、日本の調理師学校は座学が多いんですが、台湾の学校では「レシピ」を売っているんです。たとえば、魯肉飯(ルーローファン)を開業者向けに教えていたり。レシピのリストがあって、「これと、これ」を教えてくださいっていうと教えてくれる。“料理売り”のシステムに驚きました。
-独立しようと思った決め手は?
台湾留学から戻って、銀座のお店で料理長をしていたときは、60人ものお客様が入るお店を切り盛りしていました。その合間に、台湾料理のイベント企画をしていたんですが、Facebookで告知すると思った以上に人が集まるんですよね。台湾料理に興味のあるコミュニティがあったりして、僕が作った料理を定期的に投稿していたら、コミュニティの方が毎回イベントに20人くらい来てくれて。7回くらい継続したときかな。参加してくれる人たちとも仲良くなって、話を聞くと、台湾に旅行に行って食べて感動した料理が日本じゃなかなか食べられないっていうんです。
でも、僕の料理は、台湾の味がすると。
それを聞いて、「あ、これニーズあるなと」感じました。それで、独立したら台湾料理をやろうと思いましたね。
-なぜ、四谷荒木町で、10坪店舗の開業を選んだのですか?
独立する前は料理長も任せてもらって、やりがいもありましたし、台湾料理のイベントを行うとたくさんのお客様が喜んでくれて。でも、僕は自分でいうのもなんですが、中国料理マニアでして(笑)。中国語で調べないとわからないようなメニューも研究したりとか、同業の人より勉強していると自負しています。なので、もっと技術度の高い料理、同じ感覚を共有できるお客様に料理を提供したいなと思ったんです。
その場合、シェフズテーブル(厨房がみえる席)は数席、他の席数もせいぜい15席くらいかなと。それには10坪がちょうどいい。お客さんの食べ進み具合を見ながら、一人ひとりに合わせて味を微調整したり、お客さんの顔を見ながら料理を作りたいと思って、10坪のお店を選びました。
立地に関しては、最初の候補地は、赤坂だったんです。
以前仕事もしていたこともあって、いいなと思っていたんですが、交渉がうまくいかず話が流れて……。そのときは、これからどうしようかと、赤坂の喫茶店で10坪不動産の皆さんと一緒に頭を抱えたことを覚えています。
でも、次のご紹介でもって、四谷荒木町の物件を紹介してもらって、ちょうど、先輩が荒木町で独立開業していたんで状況を聞いたんですね。そうしたら、「夜遅い時間でも人が多いよ」「お酒を飲む人も多いし」「客単価も高い」「お客さんもいい人が多いぞ」と、かなりいいヒントを得られました。
知り合いが同じような規模とエリアで成功していたので、ジャンルも同じ中華でいけるかなと。しかも、僕は先輩よりもっとコアなお客様層を狙うので、開業しても棲み分けができるはず。こうした事前情報を知れたことは決断の後押しになったかもしれません。
-開業までの苦労や、楽しさを教えてください
選んだ物件は、以前、バーを営業していたみたいで。
なので、グリストラップ(油水分離阻集器)がなかったり、厨房の防水がないとか、ガスが弱いとかいろいろ課題はあったんですが、開業できることが重要だったので、あとは工夫でなんとかしました。
ガスに関しては、炒め物用に対応するには十分。電気も容量がまだあったので、業者さんに頼んでそれなりにしてもらって、蒸篭の料理のために改良しました。でも、初期費用が浮いた分、ここに投資するのは予算内でした。
それより、オーナーさんに物件契約の内定をもらうまでがヒヤヒヤでしたね。前の店舗がバーだっただけに、オーナーさんは軽飲食の業態を希望。あまり本格的な料理を提供する業態を望んでいらっしゃらなかったんです。そこで、10坪不動産のみなさんのお知恵も借りました。
「台湾の小皿料理なんです」
「料理とお酒の組みあわせで商売します」
それを売りにしようと。ということを、オーナーさんに熱意をもってお伝えしました。そうすると、偶然なのか、オーナーさんも近所でとんかつ屋さんを商っていて、台北に支店があるとか。僕の留学の話や台湾料理への思いを伝えると開業のOKをくださいました。
まさか、オーナーさんが台湾で商売しているとは知らず、これも何かの縁だったのかもしれません。
開業にあたり、10日かけて台湾の北部、東部、南部を回りました。
干しエビとか乾物系は、やっぱり台湾独自の良さがあります。あと、調理器具も日本にはないものがありますし、調味料ももちろん調達しました。
あと、台湾ではないですが、中国湖南省には質のいい唐辛子もあったり、雲南省はポルチーニ茸が豊富で、キノコの産地。黒トリュフも足を伸ばして仕入れています。
こういう中華本場の素材を、日本流にアレンジして提供したいです。
台湾東部では、マンボウが食材として市場に出ています。マンボウは腸がおいしい。よく洗ってから、九条ネギと一緒にブラックペッパーを効かせて炒めて、紹興酒で香りづけするといいお酒のアテになります。日本では高知県でも食されているみたいですが、そんな珍しいメニューをお店で提供できたらおもしろいかもと思っています。
-さあ、これからどんな店にしていきましょうか?
あえてランチを行わず、ソーセージやハムの燻製など、時間のかかる商品の仕込みに時間をかけてみようと思っています。ディナーで勝負です。
ランチをすると売上はあがるかもしれませんが、その分、仕込みの時間がなくなるので、あえてやらないことに決めました。まずは、夜のコース料理に集中。料理にこだわり、お任せコースのみから始めようと思っています。とはいえ、21時くらいから入るお客様には、コースメニューをばらして、前菜だけにするとか、ここは柔軟に対応するように考えています。なにより、どこにもないような台湾料理とお酒との組み合わせで、楽しんでもらえるお店にしたいですね。
さきほどの先輩の話ではないですが、四谷荒木町では夜にある程度お酒と、僕が提供したいマニアックな(笑)料理の需要が見込めると踏んでいます。
台南には、海鮮シチューをパンにつめて揚げた“揚げパン”のようなメニューもあり、日本ではなかなかお目にかかれない。そんなメニューを提供して、驚いてもらいたいですし、台湾のナイトマーケットにあるようなフルーツの料理や、かき氷なんていうメニューも、四谷荒木町風味にして、小皿料理として提供したいところです。
それと、土曜日の四谷荒木町は平日に比べると、比較的おだやかなので、これまで培ったノウハウで何かイベントを催して、街を盛り上げていけたらなと思っています。
-初の店舗開業。その先の展望はありますか?
お店が軌道にのったら、ソーセージの販売を考えています。
いまの飲食店の課題は、従業員不足です。
僕が修行していた頃は、「ふかひれの姿煮」をつくるにも、「げんびれ」っていって、仕入れた原料をふやかして洗ったりして、仕込みだけで1週間かかりました。いまは、人手不足でそれほどの時間をかけられないと言います。
僕が若造だった15年前なんて、いつ辞めてもいいと言われていた時代だったのが、いまは募集をしても人がこないような状況です。
そんななかで、同業者の方に「何か、これ」という商品を提供できるような仕事をしたいと思っています。僕の場合は、それがソーセージや燻製かなと。ソーセージをつくるには、すごい手間がかかるんです。ひき肉が酸化しやすいとか、熟成前の肉を仕入れてつくるほうがいいとか、細かなノウハウがたくさんある。
僕はウイグル、台湾、フランスと、3つの手法と材料でもって、ソーセージを作っています。こだわり過ぎて、“中華料理界の変態”とも言われているんですが笑。でもそのマニアックさを売りにしたいですね。
金華ハムの製法も調べてて、熟成庫もつくりたい。
僕の実家は田舎なので、実家をソーセージ工場に何時間も燻製するものをつくるとか、同業者にも喜んでもらえる商品を提供できるようなビジネスができたらいいですね。
あとは、日本と台湾の良さをつなげるようなお店や、料理をつくりたいです。
-10坪不動産については?
僕は独立を意識してから、開業の物件探しをしました。
10坪不動産を知ったのは、Facebook。
天厨菜館時代の先輩に山野辺さんという方がいて。いまでは銀座で「やまの辺 江戸中華」という人気店でオーナシェフをされている人なんですが、その山野辺さんが肉山・光山さんと仲が良いこともあって、Facebookのタイムラインで「光山さんが不動産やるぞ」というのを知ったんです。それが10坪不動産との出会いでしたね。
僕も独立するなら、山野辺さんみたいな店をしたいと思っていたこともあって、頼むならここかなと。知り合いの知り合いなら安心感はありますよね。
10坪不動産さんは、小さい物件をやっているのがいいですね。小回りも聞くでしょうし、親身に相談にのってくれるし。赤坂の物件が流れたときに、一緒に喫茶店で悩んだのもいい思い出です笑。
-これから独立する人へのメッセージ
独立したいと思うなら、いまはいい時代かもです。借入するにもしやすい追い風の時期。いま、お店で2番手くらいの人なんかで独立を考えているなら、情報のアンテナをはって、物件を探してみてもいいと思います。僕は、いわゆる種まきや勉強の期間を5年要しましたが、早く決断してもいいかもしれません。
僕は、一流料理店の料理長になったけど、その立場を捨てて、好きなことを仕事にしようと決断しました。僕の場合は、台湾料理ですが、独立する人にも何か自分がこれっていう料理があるといいと思います。あと、人と同じことしていてもしかたない、とは言えるかもしれないです。自分の弱点より、強みを活かすことかもですね。
それと、魚の料理と同じで、「目利きと仕込みが大切」。開業したい街の物件を仕入れるには、どんな人がいるかを、足を使って情報を集めるといいかもです。
あとは、SNSでの情報発信も重要です。
これまでは雑誌で取り上げられると、お店が話題になるという感じでしたが、いまは「これ!」という料理を自分で発信すれば、誰かがみつけてくれます。
自分の料理を磨いて、研いで、発信することかなと思います。
-ありがとうございました!
自他共に認める中国料理マニアの水岡さん、そのこだわりと情熱がインタビュー中にもビシビシ伝わってきました!こだわりのメニューで勝負する専門店として開業される方が増えてきております。あなたも10坪で開業しませんか?
【※取材店舗情報※】
店舗名:南方中華料理 南三
住所:〒160-0007 東京都新宿区荒木町10-14伍番館ビル2階B
店主:水岡 孝和
営業時間:18:00 ~ 23:00(L.O.22:00)
電話番号:03-5361-8363
定休日:日曜祝日
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