【西荻窪・注目の鮓処10坪店舗 (路面店) 】 名門・鮨店23年の修業を経て、独立。 “さらし仕事”に、10坪は向いている。 「鮓処ひろ志」の小松さんにインタビュー!

10坪の可能性を信じ、挑戦している方のお話を聞く「10坪ストーリー」。今回は、名門・鮓処で修業し、2017年9月に西荻窪で、自身のお店「鮓処ひろ志」を開店した店主・小松さんにお話を伺いました。


■当初「飲食不可」だった物件で開業できた理由

この業界に入ったのは、二十歳の頃です。その前は、建築業界、トラック業界といろんな経験をしてきました。鮨職人としての最初の修業先は、叔父が経営していた寿司店。そこからキャリアをスタートさせました。その後、名門である麻布十番のすし屋「まつ勘」で23年間修業し、独立、今に至ります。修業時代は、まず10年、麻布十番の本店で握りを覚え、その後、分店である吉祥寺店を任させてもらって13年。それを経て、西荻窪で自分のお店を持つことになりました。開業する5、6年前から物件を探しはじめ、西荻窪で「スケルトン状態の11坪の物件」を見つけました。とはいえ、そこは「飲食不可」の条件だったんです。でも気になって仕方ない物件だったので、「ここで飲食店をするのは、どうしても無理でしょうか?」と試しに不動産屋さんに聞いてみたら、「おたく、何屋さんなの?」と聞かれて、「すし屋です」と答えたら、「すし屋だったらいいかもしれない」と言われて、大家さんを紹介してもらえました。大家さんに尋ねると、飲食不可の理由は、前の借り手さんがスパイス料理のお店で、匂いの問題ですとか、夜も遅くまで営業していたことで、近隣住民のみなさんとの間でトラブルがあったみたいなんですよね。それで、もう面倒だから飲食店には貸さないと考えていたみたいだったんです。けれども、不動産屋さんの後押しもあって、すし屋なら、そんなトラブルもないだろうということで、開業することができました。「飲食不可」という案内にあきらめないで、不動産屋さんに相談し、直接、大家さんと話ができたのが良かったと思います。


■開業資金は「おかみさん積立」と「借り入れ」

修業時代から、自分の店を持ちたいという気持ちがありましたし、お店の親父さんからも「いずれは自分たちで独立するんだ、という想いを持って働きなさい」という指導を受けながら、修業させてもらいました。なので、お店も会社も、独立に向けてはものすごく応援してくれて、おかみさんが給料の一部を社内積み立てとして計画的に貯蓄してくださったり。そうでなければ、僕は宵越しの金は持たない職人タイプだったので(笑)、独立しようにも十分な開業資金が貯まらなかったと思います。ありがたいですよね。積み立ての期間は23年。新人のときは1万円程度で始め、一人前になってからも無理ない範囲の2万円とか3万円をコツコツ貯めて。さらに、独立を意識しだしてからは貯金も一気に増やすよう倹約や努力もして、最終的には700万円くらいは貯蓄できていましたね。貯金以外にも、開業の際は、借り入れもしました。修業先の「吉祥寺・まつ勘」のそばに多摩信用金庫があり、お店の口座も、自身の積み立ても長くお世話になっていたこともあって、支店長さんに「いま手元にこれだけしかないけど独立したいので貸してくれませんか?」と、融資の相談をしたら、即答で「小松さんなら、協力します」と言ってもらえました。長くお店に勤めたことで、信用を得られたのかなと思います。この業界は、お店を渡り歩く人もいれば、私のようにひとつのお店に長く勤める人もいます。結果、長く修業したことが、開業の際に功を奏したのだと思います。


開業の前には光山さん(https://www.10tsubo.com/story/kichijoji-nikuyama)にも相談しましたね。光山さんと初めて出会ったのは、自分が吉祥寺のお店を任されたころ。たまたま飲みに入った店が「わ」だったんです。光山さんも開業したばかりで、いろいろ話をしていたら、「自分で商売しないとあかんよ」ということをさかんに言われ、独立するうえでとてもいい刺激になりました。光山さんも開業時、ものすごい量の事業計画書を用意して銀行に通った、という話を聞いていて。自分も同じように事業計画書とか創業計画書などの資料をものすごく用意して銀行に持ち込んだら、「しっかりした計画書ですね」と褒めていただくことができました。


■10坪飲食店の魅力って何でしょうか?

まつ勘の親父さんから独立の了解をもらう5、6年前から店舗は探していました。そのときから、どれくらいの規模で開業しようかというのは想像していました。小さな坪数のお店でやっていく仕事に、ものすごく魅力も感じていたし、自分の先輩のなかでもここ10年で8坪、10坪規模のお店で、一人、二人で商売を始める人も多かったんです。それも参考にしていました。寿司屋はもともと“さらしの仕事(お客様さまと対面する仕事)”なので、小さなお店だからこそお客さまと一体感をつくれるだけに、小さい規模こそが、自分にとっては魅力的でした。大きなお店で出前もやればお座敷もやる、といったひとつ前の時代の寿司店のスタイルももちろん素晴らしいけれど、空間が大きいとどうしても目が行き届かないところがでますよね。目の行き届く範囲で、しっかりお客さまに満足してもらう規模としては10坪というのは、飲食店としては最適な規模だと思います。

‐小松さん、取材のご協力、ありがとうございました! 

コツコツと独立資金をため、人との出会いや信頼関係をいかして、開業への障壁をクリアしたお話。不動産屋さんへの交渉でも粘ってみることや、事業計画書の重要性など、10坪飲食店開業のヒントだらけでした。

 次回記事では、小松さんから、独立を考える皆さんへのさらなるアドバイスをお聞きします!

【※取材店舗情報※】

店舗名:鮓処ひろ志

住所:〒167-0042 東京都杉並区西荻窪北2-12-6

営業時間:昼 12:00~14:00:夜 17:30~22:00:日祝日 16:30~20:00 定休日:月曜日

席数:カウンター10席、お座敷1室(ほりごたつ4名程度)

電話番号:03-6753-0450

http://www.sushidokoro-hiroshi.jp/

<食べログ>

https://tabelog.com/tokyo/A1319/A131907/13214677/

 
 
中城 真介