【西荻窪・注目の鮓処10坪店舗 (路面店) 】 ひとりでも商売を続けていく覚悟と、 次世代を育てる夢と展望。そして現在。 「鮓処ひろ志」の小松さんインタビュー続編!【後編】

10坪の可能性を信じ、挑戦している方のお話を聞く「10坪ストーリー」。前編に続き、「鮓処ひろ志」の店主・小松さんにインタビュー。10坪ならでは、また、初めての開業ついてのヒントが得られるはずです。

■開業時、お店づくりで工夫したことは何でしたか?

西荻窪に物件を決めてからというもの、内装やレイアウト、スタッフのことなどの試算を重ねました。現在は、自分がカウンターの中に入り、裏に一人、おかみさんが表まわりに一人。その体制を“ダブル”でできるようにと、人を集め、一緒にがんばっています。とはいえ、開業時は、自分一人でも商売を続けられることを視野に入れていました。お店のカウンターに置いてある「ネタのケース」を見てもらうとわかるように、冷蔵庫とも違って、積み木のようなはめ込み式のケースです。ケータリングのような鮓の出張依頼の際はケースごと持ち運びもできるようになっています。なにかあれば、一人でも鮓が握れる形になっているんです。その点では、ケースひとつとっても、一人でも商売していくという覚悟を秘めているんです。一方で、当然、開業したからには、お店を成長させるという視点も忘れていません。この店は当初、スケルトンで、グリストラップもない状態。ひと昔なら、寿司屋ならば、グリストラップはなくても開業できると言われていましたが、長く商売するには必須の商売道具なので、最初の投資としてきっちり費用をかけました。


■お店のモットーは何ですか?

いまの店舗は、カウンター10席にお座敷1室のお店ですが、お座敷も、ふすまを開ければ見通しもいいですし、カウンターでお客様が隣合わせになると、小さいお店だからこその一体感が生まれます。お客さまたちも含め、私もスタッフたちも、その場や一瞬を、一緒に楽しんでもらえるような、気持ちいい雰囲気をつくれるようにしています。とにかくお客さまが一番なので、お客さまのお好みに合わせること。コースも用意していますが、アラカルトにも応えます。地域がらもあってお客さまの層もいろいろです。ご家族連れもあれば、ご年配夫婦の方もいらっしゃるし、若いカップルも来られる。いろんな方が来られるので、ボリュームのあるコース一辺倒ではなく、なるべくお客さまお一人お一人の好みに対応していくのが、いまの私たちの方針としてあります。お店の効率だけを考えればコースだけにして、時間も区切って、前半・後半で提供するのがいいのかもしれませんが、いまは時間も区切らず、お客さまの好みに合わせていくのが、一番のおもてなしと考えています。


■スタッフの構成と指導方針は?

スタッフは、この業界に12年の子もいれば、10年の子もいますし、中国からの留学生もいたりと、様々です。中国から留学している子は、2018年の夏までという限りある期間なのですが、この後は、シンガポールで私の友人がやっている、本格江戸前鮨店で修行する予定です。そのあとは中国に帰って開業するとも聞いています。鮨の可能性を感じますよね。他には、私の修業先でもある「まつ勘」で修行した後、アメリカやドイツに行って自分探しをしながら帰国して、働いている子もいます。彼も、今後、海外でやっていきたいという希望があるので応援していくつもりです。いままでのすし屋の世界は職人を囲い込むというのが多かったところがあるのですが、若い職人を育てていかなくては、“鮨”の世界もなくなってしまう、という心配もあります。それを思うに、この業界の先輩の責務として、なるべく短い期間でしっかりとした仕事を後進に教えていくことではないかとも考えています。これまで10年かけて教えてきた仕事を5年で教える、というふうに教える側の考え方も変われば、職人さんもたちも増えてくると思う。お店の経営はもちろん、そんな人材育成にも力を入れていきたいところです。私もお店の親父さんや会社に育ててもらい、独立の支援をもらっただけに、次は私が恩返しする出番かなと思っています。


  • 開業後の苦労話、嬉しかった話

独立開業して、まだ8か月しか経っていませんので、苦労話はこの先でしょうね。現状維持ではなく、失敗してもいいからチャレンジする、変化と成長を常に考えていかなくてはいけないと真剣に考えています。お客さまにいつも楽しんでもらえるような店づくりは、私にとってこれからの課題です。お店を長く続けていくのは大変なことですが、一度、お店を持ったならば、一生やり続ける覚悟が必要ですし、そうした思いを持ち続けることが大切だと思っています。そのためには自分が勉強するのは当然ですし、若い子たちを育てていく、という気持ちでいけば、お店の成長にもつながると思います。お店を経営していれば、そのうち一度はへこむときが来ると思います。諸先輩方の話を聞いていても、そこは覚悟の上。どこまでへこむのか、なんでへこむのか、まだ経験していませんが、そういう時が必ず来るはず。その時にどうしてそうなったのかを真剣に考え、それを乗り越えてこそと思っているところです。

  • 独立して実感したこと、気づいたことは?

独立しておめでとうと言われ、たくさんのお客さまが来店してくださった瞬間はものすごく嬉しかったですね。独立することの喜びのひとつだと思います。親族、友人、先輩、修業先の親父さんが来てくれた時には、修行して店を持ててよかったなあとしみじみ思いました。もともと前職ではお店ひとつのマネジメントから、経理、仕入れもすべてを完全に任されていたので自分でも満足していた面もありましたが、店長をやっているのと、独立してオーナーになることは全然違います。責任の度合いが違う。店長の時と自分がオーナーになってからでは、お付き合いする方らとの話の内容や温度感も違ってきました。オーナー同士だからこそ、共有できる部分があり、いち社員や店長では聞けないような深い話もでき、それが自身の成長につながっています。

  • 独立を考えている方へのアドバイス

私は、すし屋という仕事が好きで、長い修業期間も経て、独立しました。独立したことで、これから先、いろいろなことがあると、覚悟もしています。ですが、覚悟を決めて自分の店を持ち、自分のやりたい仕事が好きなようにやれる、自分の店が持てる。こんな幸せなことはありません。お客さまがおいしいとか、喜んでくれているシーンをみるのがやりがいですし、そんな場面に協力できるというのが、なによりうれしいですね。小さいお店だからこそ、やりがいがある。実務面でいうと、小さい店って、ロスなく仕入れもできれば、運営がしやすい利点があります。大きい店は来店するかもしれないお客さまのためにも仕入れもスタッフも事前に多く用意しなければならないものです。小さい店なら魚も席数だけの用意で済みますし、そのコストも踏まえれば、売上は小さくても利益が出せます。また、小さいお店で開業するなら、最悪、オーナー一人でも切り盛りできますが、大きな店ではそうはいかない。その利点って大きいはずです。もちろん、簡単なチャレンジではないと思いますが、自分のお店を運営するのは、やりがいもあるし、何もにも代えがたい喜びだと思います。

‐ありがとうございました! 

 独立開業には覚悟も緊張もありながら、社員時代にはないやりがいがあることがわかりました。小松さんや、後輩の方らの活躍で、「鮓処」が世界にさらに知れ渡ることにも期待です!

【※取材店舗情報※】

店舗名:鮓処ひろ志

住所:〒167-0042 東京都杉並区西荻窪北2-12-6

営業時間:昼 12:00~14:00

:夜 17:30~22:00

:日祝日 16:30~20:00

定休日:月曜日

席数:カウンター10席、お座敷1室(ほりごたつ4名程度)

電話番号:03-6753-0450

http://www.sushidokoro-hiroshi.jp/

<食べログ>

https://tabelog.com/tokyo/A1319/A131907/13214677/

 
 
中城 真介