【吉祥寺の10坪店舗 (空中階) 】予約の取れないお店、吉祥寺「肉山」の光山さんへ取材させていただきました!

今回は、10坪不動産に共感をいただいている吉祥寺『肉山』の光山さんの創業エピソードと共に、10坪の魅力についてお話ししていただきました!

光山さん
ホルモン酒場 焼酎家「わ」 から始まり、 名だたる著名人も訪れる、半年以上予約の取れないお店「肉山」をはじめとする飲食店を経営。今では数十店舗の様々なジャンルのお店をFC店またはプロデュースをしながら関わり、飲食に携わるイベントなども主催する。

 


ー店の特徴を教えてください

『わ』に関しては、約15年前にオープンしました。当時、東京では珍しかった牛塩ホルモンのお店から始めました。大阪ではポピュラーやったけど、東京は豚のタレのホルモンが多く、見たことなかったから、他の人がやってないことをしようと思ったんよね。

 

ーなぜこの場所を選んだんですか?

「友達を軸にしたお店にはしたくなかった」

場所としては、地元は大阪なんやけど、大学エリアから住んで慣れ親しんでいた吉祥寺のエリアでやりたいなと思ってたんで、ここにしました。自分の身内ばっかりが来るお店にしたくなくて。いろんなやり方があるからそれを否定するわけやないんやけど、地元で出すと先輩とか後輩、友人が顧客の中心になってくるでしょ?そうなると、この10坪くらいのお店だと、知り合いが来てくれたらよく話してしまったり、どうしてもサービスしたりとかするでしょ?そうするとすごい内輪の身内感が出てしまうでしょ?そうすると普通に入って来たお客さん、めちゃめちゃ居心地悪い思いさせるじゃないですか。そういうの俺あんまり好きじゃないから、自分の元のコミュニティーの外で新しい人のつながりを作りたかったんよね。

それがやっぱりよかったと思う。今でも仲良しの友達はお店に来なくていいと思ってるもんね。
僕に会いに来てくれるような常連さんはもう仲良しの友達みたいになるんよね。そうなるともうお客さんとしてはもう卒業してもらって飲み友達になるんよね。そうするとまた新しいお客さんが入って来てって、ぐるぐる回ってくれると嬉しいよね。

 

ーお客様と新たに関係を作るときに、名前覚えたりなど工夫されたことはありますか?


「ずっと提供し続けれる、やり続けれるものがサービスだと思う。」

常連さんや名前をちゃんと覚えようとしたこともあったけど、ある一定数増えると限界がくる。そうすると、あるとき来たら『毎度!田中さん!』とその日は都合よく名前覚えれてても、別の日に来たら『どうも、毎度!』と名前呼ばなかったら、向こうからすると、あれ?ってなる。そうなると、無駄に期待を裏切ることになるでしょ?だからそれはやめたんですよ。もちろん、完璧に覚えようともしたことはあったけどね。

電話の200件の電話帳は全てお客さんで埋まってたし、カルテみたいなんも作ってみたけど、あるとき苗字が被って来たりするでしょ?ほんなら『田中さん 背が高い』とか特徴も一緒に描いてたんやけど、それすら、もわからんようなってもうて、カルテ失敗!って。笑 で、電話帳もいっぱいなったし新しい電話にしたんですよ、そうすると、電話帳の以降とかもちろんできないでしょ?そうすると、かかって来て『田中です』って言われても、ディスプレイに出てないからどの田中さんかわからへんねん。笑  そしたら前までどーもどーも!ってゆーてたのに急によそよそしい対応になってしまってね。やり続けれられへんことをやるのはやめた方がいいなと思ってん。

だからそんなガチガチに覚えてなくても顔は知ってるくらいで、『いつも〆に何飲んでましたっけー?忘れちゃいましたわー!』くらいの方がかわいいでしょ。それくらいの距離感を保って行く方がぐちゃぐちゃにならずに、お互い心地よい距離だと俺は思ってるので、そういうルールを決めたね。

 

ー創業当初、失敗したことは?

なんにもわからんかったからね。やることなすこと、全部初めてで、失敗の連続やったね。仕込みの量、全然足らんかったりとか。でもその失敗を当然翌日には改善していってたね。どうスピーディーに改善して行くか改善のスピードを上げて行くかだけを意識してたね。ど素人でスタートしたけど、3ヶ月後くらいには俺もうベテランちゃうかなおもたもん。笑お客様もありがたいことに来てくれてたから、いろんなケースを早めに積み上げることができたことも良かったね。

 


ー失敗したことやお店が危なかったことは?

それがありがたいことにないねんなー。あとはコストが低かったから採算取りやすかったのもあるかもね。ここの家賃が10万5千円で、すぐそこのアパートに6万で家借りてたからね。ただ、お店がもし上手くいかなくても、最悪のケース、アパートを解約してここのカウンターで寝泊まりしたろという覚悟はあったよ。このカウンターに布団敷いたら寝れるなーとか思って。笑 1年くらいは自分一人でほぼ休みなく働いたね。

 

ーやって良かったなと思うことは?

「ほんまにクタクタなるまで働けてたことかな?」

一人ってのもあるしやり慣れてないってのもあるし、ドリンクも料理も教科書とかないし、ほんま自分で全部手探りでやってたってのもあって、もう営業終わるとほんまにクタクタで。時間も3:00までやってたから、いつも営業終わって電話の子機持って外出て、カラ瓶を確認しながら酒屋さんに発注するんですけど、寒い時期でも疲れすぎて外でそのまま寝てしもてたもんねー。そのまま野菜も発注してしまうんやけど、いつも話しながら寝てしまってるみたいで、次の日に八百屋から電話来た時には『また途中で寝ちゃってたねー』なんてざらにあったもんね。もう毎日そんな感じやった。

でも普通にサラリーマンしてて、なかなかクタクタになることないじゃないですか。大変やったけど、自分のお店でクタクタになるまで働けることが、やっぱ良かったなとと思ったよね。みんな、毎日クタクタになるまで全力で働けてますか?と思うよね。クタクタになるまでできるってことは、売上もある程度ついてきてるってことやしね、徐々に色々と充実していってる実感はあったかな。

 


ーアルバイトに関してこだわったことは?

ちょっと考えたらほんまはわかってるんやろ?ってアルバイト自身に決めさせてたね。

履歴書とか採用することに対しては、何のルールも決めてなかったね。髪の色とかピアスとか全くどうでもいい。だいたいお客さんからここで働きたいって言ってくれるケースが多かったし、もう言わんでもわかるやろって。自分で店員にされていややなと思うことがあればやめたらええし、ええなと思うことを提供してくれたらええよって。何も言わなくても、実際は答え持ってるからね、みんな。何したら喜んでもらえるか、何したら嫌な気持ちにさせるか、全部答えは持ってるはずやん。自分が感じることをやってくれたらええよ、って言ってたね。なので、採用にかけたお金は15年間0円やねん、ありがたいことに。今考えるとそれってすごいなー。笑

 

ーでは教育方針なども特になかった?

特にないね。さっきも言ったように、基本的には答えは絶対自分でもう持ってるでしょって思って接してる。絶対気づいてるはず。ピアスとった方がいいですか?とか聞いてきよるけど、いや、そんなん自分でもう答え出てるでしょって。そういうコミュニケーションしますね。例え話にもなるけど、「一発目のボタンは絶対間違えないようにしなさいよ」、と伝えてます。ボタン留める時って一発目のボタンさえあってたらあと全部合うやん?逆に一発目ずれると全部ずれて行って、最後でだいたい気づく。だからなにかするときに、この最初の第一ボタン大丈夫?って話はするね。ミスするときはそんなケースが多いね。

 

 

ー現場を抜けたタイミングっていつ?

9〜10年目の時に、一旦抜けたんですよねー。そのときにはスタッフも揃ってたし。でもその時、まだ40才くらいで、上がるのも若いしまだ早いなと思ったんですよね。それで、10周年を機に、自分が立つお店を作って『自分を現場に縛り付けたろ』おもて、新しくこっち側が焼いて提供する焼肉屋をするという新たなコンセプトで『肉山』をオープンしたんよ。そしたらたまたま当たったって感じかな。

 

 

ー元々、当たる見込みはあった?

みんなはあったって言ってたけどねー、僕は当てようと思ってやったんじゃなくて、1年間うろちょろしてたので、お金使ってしまわないように俺を縛ってお店で俺を管理しようと思ったんですよね。それと、引っ越したりお店の常連から卒業して行った人にまた戻って来てもらえたらええなーと思ったんですよねー。オーナー現場復帰するし、ちょっと違った業態するし、きてやー!と。それで、初めはカウンター6席、一人飲み放題込みで10,000円でやろうと思って。

少人数のお客さんに対してだけに提供するから接客だったりのパフォーマンスが良くなったんやろうね。それで口コミとfacebookやSNSでどんどん拡散されて。わーっと、自分の想像を超えてこんな風になるんやね、と。それで今に至る感じですね。

 

ーファン作りの秘訣は?振り返って何がよかったのでしょうか?

あんまり自分ではわからんねー。。おれの人柄かな?笑
(一同爆笑)

いろんな気持ちの人がいるやろうけどね、でもまぁ結果に出てるもんね、何やろね?ただ、営業スタイルとしては、「お客様に極力お金を使わさんとこう」と意識しているんですよ。

普通は、「もう一杯どうですかー?」とかってうまいこと気を使ってるように見せてお客様の財布の紐を引っ張ってるんよね。そういうのは俺されたら絶対いややし、俺はそういう押し付けがましいことはの絶対しないようにしてましたね。今思えば、それがお客さんとお店という距離で駆け引きみたいなのを無くして、気持ちのいいお付き合いにさせてもらったところかもしれないねー。

 


ー色々お話を聞いていると、一番大切にされているのはやはりお客様目線でのサービスですね。

まぁそれは何をやる上でも大前提の話やけど、そうかもね。自分が現場入ってる時はまずお店の電話の着信履歴から見てたもんね。電話かけてきてくれたお客さんやねんし、かけ直さへん意味わからんよね。でも電話でたお客さんはみんなびっくりするんよ。笑  お店から着信履歴みて折り返ししてるところなんて普通ないからねー。

例えば固定電話からの番号やと、それが取材のアポだったりするんよ。向こうは候補の中からどんどんかけて繋がったところから取材行ったりするから、そういうのもなんだかんだ逃さないようにいけてたので、今があるかなと、振り返ったら思うね。10分買い物行っても絶対見るようにしていたもんね。これは徹底してたね、お客様きて欲しいのに行きたいって電話かけてくれてる人をスルーするのは、俺は考えられへん。

暇なお店は、どうせお客さんこうへんやろって仕込み時間がだらだらゆっくりになってしもて、それでたまたまお客様が入ってきて、バタバタ準備しながら用意してるの待たなあかんお店とかあるやん?あーゆーのはありえへんよね。なので、スタッフには仕込み時間はできるだけ早くしろって言ってるよ。どうしても準備がギリギリになりがちやし、準備まだでお客さん待たなあかんとかって最悪やん?

ありきたりやけど、やっぱりコツコツ準備をちゃんとしてチャンスを掴もうとしてるかどうかって、すごい大事やと思う。

 


ー10坪不動産に対してどう思いますか?

『わ』のお店のように専門性に特化したものが面白いと思うんよね。駅から遠いのにわざわざここ目指して来てくれる人は、濃いファンで、その濃いファンが連れて来てれる人は同じ濃いファンになってくれるんよね。そういうスタイルがはっきりしてるものがおれの好みとしてはあるよね。これだけやります、みたいな。

だから10坪の飲食店限定に対して全力でサポートするというのは面白いね。いろんなことして、メニューとか増やして延命治療みたいになるくらいなら、もういっそ辞めて反省して次の新しいことやった方が絶対いいと俺は思ってる。

 

 

ー今後の展望としては?

なにをするかまではないけど、お酒飲むスタイルのお店しかやらへんからねー。あくまでお酒を軸に人が集まる場所を作りたいね。ただ、焼き鳥とか餃子とか仕込みに手がかかるものは、売上と比例して準備時間が増えてしまうから、できれば避けた方がいいとは思ってるけどね。めちゃめちゃ好きやけどね。

あとは、偉そうに言う訳ちゃうけど、チャレンジを応援していきたいと思うね。

今後は、もう年齢も上がってきたし、自分の店もいくつか持ちつつ、若い次の世代のチャレンジしたい人に対してフォローしていけたらなと、金銭的にも場所的にも、フランス料理でもイタリアンでも何でもいいし、いい人に出会えたらその人に投資したりしたいね。自分が食べたいお店をどんどん作っていきたいね。それでしっかり利益出て、その人が潤えば最高よね。

 

ー10坪でチャレンジする人に対して一言

絶対しんどなるし、自分が飽きずにやり続けられることを探すことやね。
自分が飽きるとお客さんは絶対に飽きる、だから自分が飽きないもの、飽きない工夫をしていく必要があると思います。
それと、自分に自信があるか、マンパワーでやりきれる自信があるか、自分のサービス、商品に絶対満足させれる自信があるか、まずはそこに自分でとことん向き合って自信が持てるくらいじゃないとあかんね。「この俺の餃子、まじで美味しいから食べてみてよ」くらいの気持ちがあるか、ですよね。
それくらい自信を持ってチャレンジできる状態にしてからにするといいなと思います。

 

【※取材店舗情報※】

店舗名:ホルモン酒場 焼酎家「わ」

住所:〒180-0001 東京都武蔵野市吉祥寺北町1-10-22

店主:光山 英明

営業時間:17:00~翌3:00

電話番号:042-223-3320

定休日:無休

 
 
Guest User